
1on1を定期的に入れているのに、進捗確認だけで終わってしまう。あるいは、当たり障りのない雑談で時間が過ぎていく。頑張って続けているのに手応えがない、という管理職の声はよく聞きます。
先にお伝えすると、1on1がうまくいかない原因の多くは、頻度や時間、進め方の手順にあるのではありません。当日の会話の中身、つまり上司の聞き方と問いの立て方にあります。
同じ30分でも、部下が本音を話して自分で考え出す時間と、報告と指示で終わる時間とでは、得られるものがまったく違います。
この記事では、まず1on1の基本の進め方を最短で押さえたうえで、成果を最も左右する部分、つまり本音を引き出す聞き方と、答えやすい質問の作り方を、会話例とそのまま使える質問例まで具体的に解説します。
あわせて、何を話せばいいか分からない、話が続かないといったつまずきへの対処も扱います。
- 1on1とは?目的と評価面談との違い
- 1on1の基本の進め方(頻度・時間・準備・当日の流れ)
- 頻度と時間の目安
- 事前準備
- 当日の基本の流れ
- やってはいけない使い方
- 当日の会話をどう運ぶか|本音を引き出す聞き方
- 問いの立て方とそのまま使える質問例
- 問いは、事実から気持ち、そしてどうしたいかへ
- なぜより、何・どうから入る
- 開いた問いと閉じた問いを使い分ける
- そのまま使える質問例
- アドバイスしたくなったら、問いに変える
- 何を話すか|テーマに困らない4つの引き出し
- 会話例で見る|進捗確認で終わる1on1から引き出す1on1へ
- 1on1が続かない・うまくいかないときの対処
- それでも部下が話してくれないときは
- まとめ|1on1のやり方は、手順より当日の運びで決まる
- よくある質問
1on1とは?目的と評価面談との違い
まず、土台になる前提を短く確認します。
1on1とは、上司と部下が一対一で、定期的に行う対話のことです。ポイントは、これが部下のための時間だということです。
目的は、部下の成長を支えること、日ごろの課題や引っかかりを早めに把握すること、そして信頼関係を育てることにあります。上司が進捗を管理するための場ではありません。
混同されやすいのが、評価面談との違いです。評価面談が、半期や四半期ごとに成果を評価し、目標をすり合わせる場であるのに対し、1on1は高い頻度で行う、部下主体の対話です。
ここを取り違えて、査定や詰めの場にしてしまうと、部下は身構え、本音を出さなくなります。
なお、1on1は部下育成の一つの手段です。育成の全体像から知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

関連記事:部下育成の方法とは?基本のポイント・指導法と聞き方・問い・強みの引き出し方を会話例で解説
1on1の基本の進め方(頻度・時間・準備・当日の流れ)
進め方の基本を押さえます。ここは器の部分なので、最短で確認して、後半の中身に進みます。
頻度と時間の目安
一般的には、週1回から月1回で、1回15分から30分程度が目安です。ただし、大切なのは長さや頻度そのものよりも、続けることです。月1回の15分でも、途切れずに続くほうが、たまに開く1時間よりも効きます。ここは話していい場所だという安心感は、回数の積み重ねでしか育ちません。
事前準備
当日いきなり始めると、何を話すか分からず沈黙になりがちです。部下には、話したいことを1つか2つ、軽く考えてきてもらうとスムーズです。
ただし、細かく指定して報告書のように書かせると負担になり、かえって形式的になります。メモ程度で十分だと伝えましょう。
上司側は、前回どんな話をして、何を次にやると決めたかを見ておくと、続きから入れます。
当日の基本の流れ
こだわりすぎる必要はありませんが、迷ったら次の流れが使えます。まず、軽い近況からその日の様子を確認します。
次に、部下が話したいテーマを出してもらい、それを深掘りします。最後に、次までにやることを一つだけ決めて終えます。あれもこれもと詰め込まず、一つに絞るのがコツです。
やってはいけない使い方
進捗確認だけで終える。それは業務報告であって、1on1ではありません。
評価や査定の場にする。部下は安心して話せなくなります。
議事録づくりが目的になる。記録は、決めたことと次にやることの2つで十分です。
ただし、頻度や流れを整えるだけでは、対話の中身は変わりません。1on1の効果を分けるのは、この後に解説する、当日の会話の運び方です。
当日の会話をどう運ぶか|本音を引き出す聞き方
ここからが本題です。まず意識したいのは、1on1は上司が答えを出す場ではなく、部下に話しきってもらう場だということです。
部下が話し、あなたが最後まで聴ききると、部下は自分の言葉を自分の耳で聞きながら、考えを整理していきます。
解決策を渡さなくても、話すこと自体が部下の思考を前に進めるのです。だからこそ、上司の役割は、答えることよりも、話しやすくすることになります。次の4つが効きます。
まず、上司が黙る
目安は、上司が話す時間を全体の2割まで下げること。良かれと思ってアドバイスを重ねるほど、部下は聞き役に固定され、自分で考えなくなります。しゃべりたくなったら、ひと呼吸おく。それだけでも会話は変わります。
伝え返しで、受け止めたことを返す
部下が「少し大変で」と言ったら「大変だったんだね」と返します。ポイントは、上司が言い換えないことです。
相手が使った言葉を、そのまま返す。受け止められたと感じて、続きを話しやすくなります。
沈黙を、3秒待つ
部下が黙るのは、話す気がないからではなく、考えている時間であることが多いものです。問いを投げたら、気まずさに負けて先に答えを言わず、口を挟まずに待ちます。
評価やアドバイスを、すぐに挟まない
「それは違う、こうすべき」と即座に返すと、部下は次から話さなくなります。まずは最後まで聞き切る。アドバイスするのは、部下が話しきってからで遅くありません。
なお、もともと無口な部下や、なかなか心を開いてくれない部下への聞き方は、さらに踏み込んだ工夫が要ります。詳しくは以下の記事で解説しています。

関連記事:部下が話してくれない原因と対処法|本音を引き出す聞き方・質問例を会話例で解説
問いの立て方とそのまま使える質問例
聞く姿勢ができたら、次は問いです。質問例を並べる前に、問いを出す順番を押さえておくと、質問集がただのリストで終わりません。
問いは、事実から気持ち、そしてどうしたいかへ
答えやすい順番は、事実から入り、気持ちに触れ、最後に本人がどうしたいかへ、という流れです。
いきなり「どう思う、どうしたい」と大きく聞くと、部下は何から話せばいいか分からず詰まります。
まず答える範囲の狭い事実から入り、口が開いてきたら、少しずつ気持ちや考えに移していきます。
このとき、気持ちの言葉は、上司が言い換えないことが大切です。
「しんどい」と言われたら「しんどかったんだね」と返す。前向きな言葉に置き換えた瞬間に、分かってもらえなかったと感じさせてしまいます。
なぜより、何・どうから入る
なぜできなかったの、は詰問に聞こえ、部下を守りに入らせます。同じことを聞くなら「何がネックだった、どうすればできそう」と、事実と次の行動に向かう問いに変えます。過去を追及するのではなく、前に進む問いにするのがコツです。
開いた問いと閉じた問いを使い分ける
「できた、できてない」で終わる閉じた問いは、事実確認には有効ですが、思考は広がりません。
考えさせたい場面では「どう進める、他にどんなやり方がある」と、部下が自分の言葉で答える開いた問いに切り替えます。
そのまま使える質問例
1on1でそのまま使えるよう、事実から気持ち、どうしたいか、の順に並べました。上から順に使うと、自然に会話が深まります。
入口(安心してもらう):「最近、忙しかった?」「体調は大丈夫そう?」
事実(具体で答えやすく):「今週やった仕事で、一番時間がかかったのはどれ?」
事実(引っかかりを前提に):「進めていて、止まっているところはどのあたり?」
感情(気持ちに触れる):「それ、正直しんどくない?どう感じてる?」
欲求(本人の考えを尊重):「あなたとしては、どうしたいと思ってる?」
一歩を決める:「次までに、まず何から手をつけてみる?」
アドバイスしたくなったら、問いに変える
経験のある上司ほど、答えが見えてつい教えたくなります。そこをこらえ、自分の答えを問いの形に変えて渡すのがコツです。
「Aでやるべき」と言う代わりに「AとB、どっちが早いと思う」と問う。結論を本人に言わせることで、次の行動が自分ごとになります。
何を話すか|テーマに困らない4つの引き出し
1on1を続けていると、話すことがない、ネタが尽きた、という場面が出てきます。そんなときは、話題を次の4つの引き出しから探すと詰まりにくくなります。
業務の振り返り:いま抱えている仕事、進めていて引っかかっていること。
キャリアと成長:これからやってみたいこと、伸ばしたい力。
コンディションと働き方:体調、忙しさ、働きやすさ。
関係構築:チームの中で気になっていること、ちょっとした雑談。
ただ、本当のところ、テーマ探しよりも大切なのは運び方です。ネタが尽きるのは、一つの話題を事実の確認だけで終わらせているからであることが少なくありません。
「今週一番時間がかかった仕事はどれ?」という一つの事実から「それはどう感じた、どうしたい?」と掘っていけば、一つの話題でも十分に深まります。
毎回ゼロから探すのではなく、前回決めた、次までにやること、を入口にするのもおすすめです。
会話例で見る|進捗確認で終わる1on1から引き出す1on1へ
同じ、進捗が遅れている部下との1on1を、2通りで比べます。
Before:進捗確認で終わる1on1
上司「例の件、進んでる?」
部下「はい、少し遅れていますが、やってます」
上司「そっか、じゃあ早めにお願いね。他は大丈夫?」
部下「はい、大丈夫です」
一見スムーズですが、部下は何も話していません。遅れの理由も、次どうするかも、そのままです。次の1on1でも、おそらく同じやり取りになります。
After:事実から気持ち、どうしたいか、の順で引き出す1on1
上司「お疲れさま。今週、けっこう忙しかった?」
部下「そうですね、ちょっとバタバタしてました」
上司「バタバタしてたんだ。(沈黙)…その中で、一番手こずったのはどれ?」
部下「……実は、例の件で、どう進めればいいか分からなくて、止まっていました」
上司「どう進めればいいか分からなかったんだね。(間)正直、しんどくなかった?」
部下「はい、正直、ちょっと焦ってました」
上司「焦ってたんだね。話してくれてありがとう。あなたとしては、どう進めたい?」
部下「本当は、先にAさんに相談したかったんですけど、忙しそうで言い出せなくて」
上司「そうだったんだ。じゃあ、次までに、まずAさんに聞いてみるところからやってみようか」
やっていることは、小さな事実から入り、伝え返しと沈黙で受け止め、事実、気持ち、どうしたいの順にたどっただけです。
気持ちに触れるところでは「部下が使った、焦ってました」という言葉をそのまま返しています。
指示はしていませんが、部下は自分から引っかかりと、本当はこうしたかったという気持ちを口に出し、次の一手まで自分で決めました。
1on1が続かない・うまくいかないときの対処
続けていると、うまくいかない場面は必ず出てきます。よくあるつまずきと、その対処を挙げます。
雑談や形骸化で終わる:今日は何を決める時間かを、最初に一言そろえます。最後に、次までにやることを一つ決めるだけでも、締まります。
上司が話しすぎてしまう:2割まで下げる意識と、しゃべりたくなったらひと呼吸、を思い出します。
毎回同じ話で飽きる:4つの引き出しでテーマを回し、前回の続きから入ります。
部下が話してくれない:これは次の見出しで扱います。
そして、毎回の1on1を必ず成功させようと意気込みすぎないことも大切です。今日は会話が弾まなかった、と認識するだけで十分な日もあります。上司が気負いすぎると続かなくなります。1on1は、一度で成果を出すものではなく、続けることで効いてくるものです。
それでも部下が話してくれないときは
聞き方や問いを工夫しても、一度で話してくれるとは限りません。信頼は時間をかけて育つものなので、焦らず続けることが前提です。
一方で、以前より明らかに口数が減った、元気がない状態が続く、といった変化があるときは、仕事の悩みだけでなく、心身の不調が背景にある可能性もあります。
その場合、無理に聞き出そうとするのは逆効果です。プレッシャーをかけず、話したくなったらいつでも聞くよ、という姿勢を保ちつつ、必要に応じて産業医や人事、社内外の相談窓口といった専門的なサポートにつなぐことも選択肢に入れてください。聞き方の技術は万能ではありません。
まとめ|1on1のやり方は、手順より当日の運びで決まる
1on1のやり方というと、頻度や時間、流れといった手順に目が向きがちです。しかし、効果を分けるのは、当日の会話をどう運ぶかです。
進め方(頻度・準備・流れ)は最短で整える
上司が黙り、伝え返しと沈黙で受け止める
事実から気持ち、どうしたいかの順に問い、気持ちは相手の言葉のまま返す
テーマを探すより、一つの事実を掘る
続かなくても、継続を前提に焦らない
まずは次の1on1で、最初の問いを小さく具体的なものに変え、いつもより聞く時間を増やしてみてください。進め方は同じでも、中身は今日から変えていけます。
よくある質問
忙しくて、まとまった時間がとれません。それでもできますか。
隔週や月2回で、15分程度からで十分です。頻度や長さより、途切れず続けることのほうが効果につながります。短くても定期的に続けることで、ここは話していい場所だという安心感が育っていきます。
話すことがなくて、沈黙になってしまいます。
業務の振り返り、キャリアと成長、コンディション、関係構築の4つから話題を探すと詰まりにくくなります。それでも尽きるときは、一つの事実を、それはどう感じた、どうしたい、と掘ってみてください。前回決めた次にやることを入口にするのも有効です。
沈黙が気まずくて、つい自分が話してしまいます。
部下が黙るのは、多くの場合、考えている時間です。問いを投げたら、3秒は待ってみてください。上司が先に埋めてしまうと、部下の言葉は出てきません。
評価面談と何が違うのですか。
評価面談は成果を評価し目標をすり合わせる場ですが、1on1は部下主体の対話の場です。査定や詰めの場にしないことが、本音を引き出す前提になります。
部下が本音を話してくれません。
原因の多くは性格ではなく、話せる場と聞き方にあります。切り分けと具体的な対処は、〔部下が話してくれない(記事)〕をご覧ください。
自分だけのキャリアを、
自分でデザインする力を身につけませんか?
ポジウィル
コーチングスクールPOSIWILL COACHING SCHOOL
「ポジウィルコーチングスクール」は、35,000人以上のポジウィルキャリアの支援実績をもとに開発されたオリジナルプログラムを通じて、自分自身でキャリアを考え、行動し続ける力を育てます。一度学べば、どんな仕事に就いても、どんな人生の転機が訪れても、自分らしくキャリアを築いていくことができる、一生役立つスキルが身につきます。
こんな人におすすめ
- 自分自身で悩み解決やキャリア設計をしていきたい
- コミュニケーションスキルを高めたい
- 将来マネジメントにチャレンジしたい
- 人材業界や人事にキャリアチェンジを考えている



