
1on1で水を向けても、返ってくるのは、特にないです、大丈夫です。順調そうに見えていた部下が、実は一人で抱え込んでいた。こうした、部下が話してくれない、本音を言わないという悩みは、多くの管理職が経験します。
先に結論をお伝えします。部下が話してくれないのは、その人の性格のせいではないことがほとんどです。多くは、話せる場がない、話しても否定されると感じている、聞き方が本音を引き出せていない、といった、環境と関わり方の問題です。
自分の関わり方に原因があるかもしれない、と感じても、責めなくて大丈夫です。まずは、今日からすぐ使える一言をお伝えしたうえで、なぜ話してくれないのか、その原因から対処法まで、対話の実例とそのまま使える例文つきで、順に解説します。
まず結論|今日の1on1で、これだけ変えてみてください
忙しい方のために、最初に一つだけお伝えします。「何か問題はある?どう?」といった大きな問いを「今日の中で一番時間が仕事はどれ?」という小さく具体的な問いに変えてみてください。
大きな問いは、答える範囲が広すぎて、部下はどこから話せばいいか分からず、特にないですで終わりがちです。範囲を狭めるだけで、口の開き方が変わることがあります。
これだけでも、次の1on1から試せます。ただ、これは数ある対処法の一つにすぎません。なぜ部下が話してくれないのか、その原因を知っておくと、この問いをはじめ、対処法全体をより効果的に使えるようになります。ここから、順に見ていきましょう。
こんな場面、ありませんか
まずは、よくある場面を確認します。当てはまるものがあれば、この記事の対処法が役に立ちます。
1on1で質問しても、特にないですで会話が続かない。
進捗を聞くと大丈夫としか言わないが、後で問題が発覚する。
以前は話していた部下が、最近あまり喋らなくなった。
報連相が薄く、悪い情報ほど上がってこない。
共通しているのは、部下が安心して本音を出せていないことです。ここから、その理由を掘り下げます。
なぜ部下は話してくれないのか|5つの原因
原因は部下側だけにあるとは限りません。むしろ、上司側の関わり方や、二人の関係性に理由があることが少なくありません。代表的な5つを挙げます。
1. 話す時間や場が用意されていない
日々の業務に追われ、上司がいつも忙しそうにしていると、部下は今は声をかけないほうがいいと気を遣い、相談を切り出せなくなります。
廊下ですれ違いざまに大丈夫と聞く程度では、込み入った話は出てきません。まとまった話は、あらかじめ時間と場所を用意して初めて生まれるものです。
部下との会話が業務連絡だけになっていると感じるなら、この原因が大きいかもしれません。
2. 話しても否定される、評価されると感じている
過去に、意見を否定された、相談したらすぐ解決策を返された、ミスを強く責められた、といった経験があると、部下はどうせ言っても無駄だ、言わないほうが安全だと学習します。
とくに、上司が評価者でもある関係では、これを言ったら評価が下がるかもしれないという緊張が自然と働きます。これが心理的安全性の低い状態です。
本音よりも当たり障りのない報告が増えているなら、この原因を疑ってみてください。
3. 上司が話しすぎている
熱心な上司ほど、良かれと思って、つい自分が話してしまいます。アドバイスや持論で場が埋まると、部下は聞き役に固定され、話す隙をなくします。
上司が話し終えたころには、部下が何を考えていたかは分からないまま、時間だけが過ぎていくのです。
面談のあとで、今日も自分ばかり話していたと感じることが多いなら、この原因が当てはまります。
4. 何を話せばいいか分からない
いきなり、何か問題はある、どう思う、と大きく聞かれても、部下は何をどこから話せばいいか分からず、答えに詰まります。
じつは、本人の中でも、そもそも何に引っかかっているのかがまだ言葉になっていないことがあります。
悩みは、何に悩んでいるかが分からない段階から、どうしたいかが分からない段階へと、少しずつ形になっていくものです。
まだ言葉になっていない段階の部下に漠然とした問いを投げても、つかむものがなく、沈黙が返ってきます。
この沈黙を、話す気がないと受け取るのは早計で、多くは問いが大きすぎるだけです。
5. まだ信頼関係が育っていない
異動や昇格の直後、配属されて日が浅いなど、関係性がまだ浅い段階では、本音はそう簡単には出てきません。
相手がどんな人か分からないうちは、当たり障りのない話でようすを見るのが自然な反応です。信頼は、日々の小さなやり取りの積み重ねで、時間をかけて育っていきます。
焦って一気に距離を詰めようとすると、かえって身構えられることもあります。
その奥にある、諦めの感覚
ここまでの5つは、いわば行動レベルの原因です。ただ、これらが積み重なると、もう一段深いところに、話しても状況は変わらない、どうせ無駄だという、諦めの感覚が根づくことがあります。
一度、意見を伝えたのに何も変わらなかった。相談したのに、聞き流された。こうした経験が重なるほど、言うこと自体をやめてしまいます。表面上は落ち着いて見える1on1の裏に、実はこの諦めが隠れていることは、決して珍しくありません。
私たちはこれまで、50,000人以上のキャリア支援を通じて、上司との関係に悩む相談者の声を数多く聞いてきました。その中でも、言っても無駄だという感覚が、本音を閉ざす最大の要因になっているケースを、繰り返し見てきています。
本音を閉ざす、本当の理由|上司自身のあり方
原因を5つ挙げましたが、実はもう一つ、見落とされがちな視点があります。部下が本音を言うかどうかは、上司の聞き方の技術だけでなく、上司自身がどうあるかにも左右される、ということです。
完璧に振る舞おうとする上司ほど、部下は心の距離を取りやすくなります。隙のない上司には、弱みや失敗を見せにくいからです。逆に、弱さや失敗談を少しだけ見せる上司には、安心して本音を話したくなります。
これは、精神論ではありません。次の対処法で紹介する、上司から先に心を開くという関わりは、数あるテクニックの一つではなく、本音を引き出すすべての土台になる考え方です。
話してくれない状態を、放っておくとどうなるか
部下が話してくれない状態を、忙しいからと後回しにすると、次のようなことが起こりがちです。
突然、退職を告げられる。本人の中で気持ちの整理が終わってからでは、引き止めは間に合いません。
問題の発覚が遅れる。ミスやトラブル、体調の不調が、深刻になってから初めて表に出てきます。
上司自身が疲弊する。部下の状態が見えないまま仕事を回し続けると、上司の側にも不安とストレスがたまっていきます。
特に注意したいのは、表面上は問題なさそうに見えたまま、静かに限界を迎えているケースです。声を上げないまま離職に至ることは、決してめずらしくありません。
だからこそ、早いうちから話せる関係をつくっておくことが大切です。ここからは、具体的な対処法を見ていきます。
今日からできる対処法
不安をなくすことは急にはできませんが、今日から変えられることがあります。ここでは、土台となる関わり方から、聞き方、問いの立て方、そして場面ごとの対応まで、順に見ていきます。
対処法①:話してくれる場と関係をつくる
技術に入る前に、土台となる関わり方です。ここが整うと、後の聞き方や問いが効いてきます。
土台にあるのは、部下が何を言っても、まずはいったんすべて受け止めるという姿勢です。賛成できる意見も、そうでない意見も、評価を挟まずに最後まで聴き入れる。
この受け止めが、ここでは何を言っても大丈夫だという安心感をつくります。
上司から先に心を開く(自己開示)
部下にだけ本音を求めるのは公平ではありません。最近こういうことで悩んでいて、と上司が先に少し打ち明けると、部下も話しやすくなります。先ほど触れた、上司自身のあり方の話は、この項目に直結しています。完璧を装わず、少しだけ弱さを見せる。それが、本音を言い合える関係の入口になります。
聞く姿勢を、態度で示す
手を止め、体を相手に向け、目を見て、相槌を打つ。ながら聞きは、聞いていないのと同じに伝わります。
同感できなくても、分かろうとする
共感とは、相手と同じ気持ちになることではなく、相手にはそう見えているという事実を分かろうとすることです。ここを取り違えて、賛成できないから受け止められないと考えると、本音は閉じてしまいます。意見に同意しなくても、その人がそう感じた背景は受け止められます。
承認の言葉を、こまめに伝える
助かっているよ、任せられて安心だ、といった一言の積み重ねが、話しても大丈夫だという安心感をつくります。
分からないことは、素直に聴き直す
部下の話が分からないとき、分かったふりで流さず、そこ、もう少し聞かせて、と素直に返します。取り繕わない上司の姿勢は、かえって安心感につながります。
接触の回数を増やす
まとまった面談だけでなく、短い声かけを日常的に増やすと、少しずつ話しやすい関係になっていきます。
対処法②:本音を引き出す聞き方の実技
場が整ったら、聞き方です。ここで意識したいのは、上司が答えを出すことではなく、部下自身に話しきってもらうことです。
要点は、上司が話す割合を全体の2割ほどに抑えること。そして、部下の言葉をそのまま返す伝え返しと、考えている時間としての沈黙を、待つことです。短い場面で見てみます。
部下「ちょっと、大変で」
上司「大変だったんだね。(間)」
すぐに助言せず、ひと呼吸置くだけで、部下は続きを話し出すことがよくあります。聞き方の詳しい実践方法、まず上司が黙る、伝え返し、沈黙を3秒待つ、といった技術の一つひとつ、そしてやってはいけない聞き方までは、以下の記事でくわしく解説しています。

関連記事:傾聴力の高め方とは?部下の本音を引き出す聴き方のコツと、聴けない癖の直し方
対処法③:答えやすい問いに変える
話さない部下には、問いの作り方が特に重要です。いきなり深い問いを投げず、答えやすいものから段階的に進めます。目安になるのは、事実から入り、気持ちに触れ、最後に本人がどうしたいかへ、という順番です。
小さく、具体的な問いから入る
何か問題あるという大きな問いより、今日やった中で一番時間がかかったのはどれ、のように、答える範囲が狭く具体的な問いのほうが口を開きやすくなります。
引っかかりがある前提で聞く
困っていることはあると聞くと、ない、で終わりがちです。進める中で、引っかかっているところはどこと、あることを前提に聞くと、正直に言いやすくなります。
気持ちは、相手の言葉のまま受け取る
しんどい、と言われたら、しんどかったんだね、と返します。つらい、モヤモヤする、といった言葉を、上司が前向きな言葉に言い換えないことが大切です。言い換えた瞬間に、分かってもらえなかったと感じさせてしまいます。
どうしたいかは、本人に委ねる
最後は、あなたとしてはどうしたい、と本人の考えに返します。上司が結論を出すのではなく、本人が選ぶことで、次の一歩が自分ごとになります。
そのまま使える問いの例、場面別の質問のレパートリーは、以下の記事にまとめています。

関連記事:すぐ使える1on1の質問例50|目的別リストと、会話が続く受け方
状況別|こんなときはどうする
基本の対処法に加えて、部下や状況によって、少し工夫したいことがあります。
若手・入社間もない部下には
関係がまだ浅いことを前提にします。いきなり深い話を引き出そうとせず、まずは雑談や短い声かけで、接触の回数を増やすことから始めます。信頼は、まとまった面談一回より、日常の小さなやり取りの積み重ねで育ちます。
中途入社の部下には
前職との比較で本音を言いにくいことがあります。前のやり方とうちのやり方、どっちがいいと思う、と聞かれること自体を警戒している場合もあるので、前職の話を否定せず、まずはそういうやり方だったんだね、と受け止める姿勢を見せます。
オンラインでの1on1では
表情や声のトーンが読み取りにくく、本音のサインを見逃しやすくなります。意識して、今の話、どう感じた、と一言確認を挟むと、画面越しでも気持ちを言葉にしてもらいやすくなります。
上司自身が忙しく、余裕がないときは
無理に長い時間を確保しようとしなくてかまいません。ながら聞きだけはやめ、最初の3分だけでも手を止めて向き合う。短くても、その3分の質が、部下にはちゃんと伝わります。
【無料プレゼント】本音を引き出す技術(公式LINEで受け取れます)
ここまでお伝えした、場のつくり方、聞き方、問いの立て方を、体系立ててまとめた資料を、公式LINEにご登録いただいた方に無料でお渡ししています。相手の状態に合わせた関わりの使い分けや、過去・現在・未来の視点で相手の考えを引き出すコツなど、明日の1on1からそのまま使える内容です。
会話例|「特にないです」で終わる1on1を、実況解説で見る
言葉で説明するより、実際の対話を見たほうが分かりやすいところがあります。ある1on1のやり取りを、区切りながら見ていきます。
上司「お疲れさま。今日はゆっくり話そう。最近、けっこう忙しかった?」
ここで、進捗どう、ではなく、忙しかった、という体調・状況を尋ねる問いから入っています。仕事の評価につながる質問でないと分かるだけで、部下は身構えずに答えやすくなります。
部下「そうですね、ちょっとバタバタしてました」
上司「バタバタしてたんだ。(沈黙)……その中で、一番手こずったのはどれ?」
ここで上司は、そうなんだ、で流さず、まず伝え返しをしたうえで、あえて何も言わずに間を置いています。この沈黙が、部下が次の言葉を探す時間になります。そのうえで、一番手こずったのはどれ、という小さく具体的な問いに進んでいます。
部下「実は、Aの案件で、どう進めればいいか分からなくて、止まっていました」
上司「Aで、どう進めればいいか分からなかったんだね。(間)正直、しんどくなかった?」
ここでも、上司はまず相手の言葉をそのまま伝え返しています。そのうえで、しんどくなかった、と気持ちに触れる問いに移っています。事実を確認してから気持ちに触れる、という順番を守っているのがポイントです。
部下「はい、正直、ちょっと焦ってました」
上司「焦ってたんだね。話してくれてありがとう。ちなみに、あなたとしては、どう進めたいと思ってる?」
ここでも、焦ってました、という部下自身の言葉を、言い換えずにそのまま返しています。そのうえで、最後に、どう進めたい、と本人の考えを尋ねています。上司が答えを渡すのではなく、本人に委ねる問いで締めているのが分かります。
部下「本当は、先にBさんに相談したかったんですけど、忙しそうで言い出せなくて」
上司「そうだったんだ。じゃあ、そこ、一緒に考えてみようか」
ここまでのやり取りを振り返ると、上司がしたことは、事実を尋ね、伝え返しと沈黙で受け止め、気持ちに触れ、最後にどうしたいかを本人に委ねる、という一連の流れだけです。指示や解決策の提示は、一度もしていません。それでも部下は、自分から引っかかりと、本当はこうしたかったという気持ちを、言葉にすることができました。
それでも話してくれないときは、無理に聞き出さない
対処法を試しても、一度で話してくれるとは限りません。信頼は時間で育つものなので、焦らず継続することが前提です。
一方で、以前より明らかに口数が減った、元気がない状態が続く、といった変化があるときは、仕事の悩みだけでなく、心身の不調が背景にある可能性もあります。
その場合、無理に聞き出そうとするのは逆効果です。プレッシャーをかけず、話したくなったらいつでも聞くよ、という姿勢を保ちつつ、必要に応じて産業医や人事、社内外の相談窓口といった専門的なサポートにつなぐことも選択肢に入れてください。
やってはいけないNG対応
最後に、部下の口をさらに閉ざしてしまう対応を確認します。
問い詰める: なんで話さないの、と責めると、萎縮してさらに話さなくなります。
無理に聞き出す: 話したくないことを追及すると、信頼を失います。
話を奪って結論を出す: 途中で遮ってアドバイスすると、話す意味を感じなくなります。
気持ちを言い換える:しんどいと言われて、でも成長のチャンスだよと返すと、分かってもらえないと感じさせます。まずは相手の言葉のまま受け止めます。
聞いた話を他言する: 一度でも守秘が破られると、二度と本音は出てきません。
まとめ|話してくれないのは、性格ではなく場と聞き方の問題
部下が話してくれないとき、原因の多くは相手の性格ではなく、話せる場と、上司の聞き方にあります。
上司から先に心を開き、何を言われてもまず受け止める
上司が黙り、伝え返しと沈黙で受け止める
事実から入り、気持ちは相手の言葉のまま返し、最後にどうしたいかを本人に返す
大きな問いより、小さく具体的な問いから入る
一度で解決しない前提で、焦らず続ける
まずは次の1on1で、いつもより聞く時間を増やし、最初の問いを小さく具体的なものに変えてみてください。部下が話してくれない状況は、関わり方で確実に変えていけます。
よくある質問
大丈夫です、で会話が終わってしまいます。何を変えればいいですか。
大丈夫、どう、といった問いは、はいかいいえで答えられるため、会話が続きにくくなります。今日の中で一番時間がかかったのはどこ、のように、答える範囲が狭く具体的な問いに変えると、部下が口を開きやすくなります。
忙しくて、まとまった時間がとれません。それでもできますか。
月1回や隔週で、15分程度からで十分です。頻度より、続けることのほうが大切です。短くても定期的に続けることで、ここは話していい場所だという安心感が少しずつ育っていきます。
もともと無口な部下でも、話してくれるようになりますか。
話すのが得意かどうかは、あまり関係ありません。大切なのは、さえぎらない、評価しない、最後まで聴くという姿勢と、答えやすい問いから入ることです。上司が聞き役に回るほど、無口な部下も少しずつ話してくれるようになります。
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