
キャリア面談で何を話せばいいか分からない。評価面談との違いが曖昧で、どこか気まずくなる。前向きな話はできても、その後、部下の行動が何も変わらない。
社内でキャリア面談を任された上司や人事の方から、こうした戸惑いをよく聞きます。
先にお伝えすると、キャリア面談は、評価する場でも、上司が答えを出す場でもありません。社員自身が、これからの仕事やキャリアについて気づき、自分で次の一歩を決めるのを支える場です。
だから、特別な才能はいりません。押さえるべきポイントと進め方さえ分かれば、誰でも意味のある面談にできます。
この記事では、評価面談との違いから、上司が押さえておくべきポイント、準備、取り上げるテーマ、当日の進め方までを解説します。
そして、多くの解説が手薄なところ、つまり引き出した気づきを、本人が納得する行動へどう導くかまでを、会話例を交えて具体的に見ていきます。
上司の方はもちろん、人事など社内のキャリア支援を担う方にも使える内容です。
- 社内のキャリア面談とは?何をする場か
- 何のために行うのか
- 評価面談・1on1との違い
- キャリア面談で上司が押さえておくべきポイント
- 主役は社員。評価する場にしない
- 上司自身が、自分のキャリアを考えておく
- 部下のキャリア支援も、自分の役割だと捉える
- 答えを出す人ではなく、引き出す人になる
- 面談の前に|準備とキャリアシート
- キャリア面談で取り上げるテーマ
- 業務経験の振り返り
- 仕事の中のやりがい・大切にしている価値観
- これから挑戦したいこと・伸ばしたい力
- いま感じている課題や不安
- 当日の進め方|本音を引き出す対話
- 会話例|いい話で終わる面談から、行動が変わる面談へ
- 面談で終わらせない|引き出した後の導きとフォロー
- キャリア面談を成功に導くポイント
- それでも難しいと感じたら
- まとめ|キャリア面談は、社員が自分で決めるのを支える場
- よくある質問
社内のキャリア面談とは?何をする場か
社内のキャリア面談とは、社員がこれからの仕事やキャリアの方向を、上司や人事と一緒に考え、その中長期的な成長を後押しする場のことです。
いちばんの特徴は、主役が社員だということ。上司が方針を指示する場ではなく、社員自身が、自分はどう働いていきたいかを言葉にし、次の一歩を見つけていく時間です。
こうした面談を設ける企業が増えている背景には、働き方の変化があります。かつてのように、会社が敷いた一本道を全員が進む時代ではなくなり、一人ひとりが自分でキャリアを考えること、いわゆるキャリア自律が求められるようになりました。
会社にとっても、社員が仕事に意味を見いだせず意欲を落としたり、辞めてしまったりするのを防ぎ、定着や適材適所につなげる手立てとして、キャリア面談が注目されています。
何のために行うのか
キャリア面談は、社員と会社の双方にメリットがあります。
社員にとっては、自分の経験や大切にしたいことを整理でき、これからの方向が見えて、仕事への意欲が高まります。言われたことをこなすだけでなく、自分で考えて動く姿勢も育ちます。
会社にとっては、社員の希望や適性をつかめるため、配置や育成に生かせ、結果として定着や職場の活性化につながります。一方だけが得をするのではなく、両者にとって意味のある時間です。
評価面談・1on1との違い
混同されやすいのが、評価面談です。評価面談は、過去の成果を評価し、処遇を決める場で、主導権は評価する側にあります。
一方キャリア面談は、これからのキャリアを一緒に考える、社員が主役の場です。この2つを取り違えて、査定のような空気で進めると、社員は身構え、本音を話さなくなります。
日常の1on1とも役割が違います。1on1が、短期の業務や目の前の困りごとを扱うのに対し、キャリア面談は、もっと中長期の、これからの成長やキャリアの方向性といった話題を扱います。
日常の対話の進め方は、以下の記事にまとめています。

関連記事:1on1のやり方とは?基本と本音を引き出す聞き方・質問例を会話例で解説
キャリア面談で上司が押さえておくべきポイント
進め方の前に、面談に臨む上司側の心構えを押さえておきます。ここがずれていると、どんな進め方も空回りします。
主役は社員。評価する場にしない
まず、この時間は社員のものだ、と自分の中で決めておきます。上司が語る場でも、評価を伝える場でもありません。社員が自分のキャリアを考えるのを手伝う時間だ、という前提が、面談全体の空気をつくります。
上司自身が、自分のキャリアを考えておく
自分がキャリアについて考えたことがないと、部下のキャリアを一緒に考えるのは難しいものです。完璧な答えを持つ必要はありませんが、面談者自身が、自分はどう働いていきたいかを一度考えておくと、相手の話にも深く付き合えます。
部下のキャリア支援も、自分の役割だと捉える
目の前の業績を出すことだけが役割だと思っていると、キャリア支援は後回しになりがちです。中長期で人を育てることも、マネジメントの大切な仕事だと位置づけておくと、面談に向き合う姿勢が変わります。
答えを出す人ではなく、引き出す人になる
キャリア面談で上司に求められるのは、正解を授けることではありません。問いかけと傾聴で、社員自身の中にある考えや願いを引き出すことです。準備するのは、渡す答えではなく、投げかける問いだと考えてください。
面談の前に|準備とキャリアシート
当日いきなり始めると、何を話すか定まらず、雑談で終わりがちです。社員には、これまでの経験、得意なこと、やってみたいこと、いま感じている課題などを、事前に軽く書いてきてもらうとスムーズです。
市販や社内のキャリアシートを使うのもよいですが、細かく書かせすぎると負担になり、形式的になります。メモ程度で十分だと伝えましょう。
上司側は、その社員のこれまでの仕事や、前回の面談で話したことを見ておきます。そして、当日の冒頭で、この時間は評価ではなく、あなたのこれからを一緒に考える時間だ、と目的を言葉で伝えます。
この一言があるだけで、社員の身構えはぐっと和らぎます。
キャリア面談で取り上げるテーマ
何を話すかが曖昧だと、当たり障りのない雑談で終わってしまいます。迷ったら、次の4つを話す軸にすると、面談が深まります。それぞれ、そのまま使える問いを添えます。
業務経験の振り返り
これまでの仕事で、うまくいったこと、手こずったこと。「これまでの仕事で、一番手応えがあったのはどんな場面?」と、具体的な経験から聞きます。さらに、そこはどう進めたの、と工夫を掘ると、その社員の強みや持ち味、仕事の進め方の傾向が見えてきます。本人が当たり前だと思って見過ごしている得意を、言葉にして返せるのが、このテーマの価値です。
仕事の中のやりがい・大切にしている価値観
どんなときにやりがいを感じるか、働くうえで何を大事にしているか。「どんなときに、この仕事をしていてよかったと感じる?」と聞きます。
ここから見えてくるのは、その人のやる気の源泉、つまり、どんな仕事や環境でいきいきと力を発揮できるかです。任せ方や配置を考えるヒントにもなります。
ただし、扱うのはあくまで仕事の中で感じる価値観です。私生活や人生全体にまで踏み込む場ではありません。
これから挑戦したいこと・伸ばしたい力
やってみたい仕事や役割、身につけたい力といった、これからの方向です。「いまの仕事の中で、もっとやってみたいことはある?」「これから、どんな力を伸ばしていきたい?」と問いかけます。
見えてくるのは、その社員の伸びしろと、向かいたい方向です。ここが分かると、次にどんな機会や仕事を渡せば成長につながるかが見えてきます。
話す範囲は社内・いまの仕事での成長と挑戦にとどめ、転職を前提にした話や、人生設計にまで広げる場ではありません。
いま感じている課題や不安
業務や働き方で、引っかかっていることや気がかり。「いま、進めていて引っかかっていることはある?」と聞きます。ここで見えてくるのは、その社員がつまずいているところや、支援が必要なサインです。
早めに気づければ、意欲の低下や離職を未然に防ぐことにもつながります。大切なのは、その場で解決しようとするより、まず共有して、一緒に考える姿勢を示すことです。
これらのテーマは、順番に埋めていく質問票ではありません。その日の相手に合わせて一つ選び、深く掘っていくための軸としましょう。
当日の進め方|本音を引き出す対話
キャリア面談の質は、話す内容そのものより、上司がどう聴き、どう問うかで決まります。ポイントは3つです。
まず、安心して話せる場をつくります。冒頭で、ここでの話は評価には使わない、と伝え、上司の側から少し自分のことを話すと、社員も口を開きやすくなります。
相手の話は、途中で遮らず、こちらの言葉で言い換えずに受け止めます。
次に、事実から、価値観や持ち味へと掘っていきます。いきなり、どうなりたい、と大きく聞くと答えにくいので、まずは具体的な経験の振り返りから入ります。
そこで出てきた、うまくいった仕事を、どう進めたのか、と掘ると、その人ならではの工夫、つまり持ち味が見えてきます。
それを、あなたのこういうところが強みだね、と具体的な言葉にして返すと、社員自身の気づきになります。
問いには、いくつかコツがあります。まず、はい、いいえで終わる問いではなく、相手が自分の言葉で考える、開いた問いにすること。
次に、「なぜできなかったの?」と過去を責めるより、「どうすればうまくいきそう?」と、前を向く問いにすること。そして、こちらの答えへ誘導せず、本人の中にある考えを引き出すつもりで投げることです。
場面別のより多くの質問例は、以下の記事でまとめています。

関連記事:すぐ使える1on1の質問例50|目的別リストと、会話が続く受け方
会話例|いい話で終わる面談から、行動が変わる面談へ
ここが、多くの面談でつまずくところです。話は前向きに盛り上がったのに、面談が終わると何も変わらない。その差は、引き出した気づきを、行動まで運べたかどうかにあります。
入社数年の社員が、このままでいいのか、と漠然とした不安を口にした場面で、比べてみます。
Before:励まして、要望を聞いて終わる
上司「このままでいいのか、か。まあ、いまの仕事をしっかりやってれば大丈夫だよ。何か希望はある?」
社員「いえ、特には……」
上司「そっか。じゃあ、何かあったら言ってね」
励ましているつもりですが、社員の漠然とした不安は置き去りのままです。希望はある、と聞かれても、まだ言葉になっていないので、特にない、としか答えられません。
After:受け止めて、価値観を掘り、現職での一歩へ導く
上司「このままでいいのかな、って思うことがあるんだね。(沈黙)…そう感じるのは、どんなときが多い?」
社員「そうですね……最近、毎日同じ作業の繰り返しで、成長してる感じがしなくて」
上司「成長している感じがしない、って感じてるんだ。逆に、これまでで、成長を実感できたのはどんなとき?」
社員「去年、新しいツールの導入を任されたときは、大変でしたけど、面白かったです」
上司「新しいことを任されたときが、面白かったんだね。(間)その面白さって、どのへんにあった?」
社員「自分で調べて、周りにも教えて、形にできたところですかね。人に教えるのも、意外と嫌じゃなくて」
上司「自分で形にして、人に教える。それ、あなたの強みかもしれないね。じゃあ、いまの仕事の中で、そういう場面を少しでも増やせるとしたら、何ができそう?」
社員「……そういえば、今度の新人研修の資料づくり、手を挙げてみようかな。前から気になってたんです」
上司「いいね。じゃあ、まずはそこに手を挙げるところから、次の面談までに動いてみようか」
上司は、大丈夫、と励まして流したり、希望はある、と要望を聞いて検討で終えたりしていません。漠然とした不安をそのまま受け止め、成長を実感した経験から、その社員が何にやりがいを感じるのかを一緒に掘りました。そこから、転職や社外にではなく、いまの仕事の中でその強みを活かせる一歩を、社員自身が見つけています。気づきを引き出しただけで終えず、明日動ける行動まで一緒に置いたのが、行動が変わる面談との分かれ目です。
面談で終わらせない|引き出した後の導きとフォロー
キャリア面談でいちばん差がつくのが、引き出した後です。気づきを引き出すところまでで満足すると、いい話だった、で終わってしまいます。そこから、本人が動ける形まで導くのが、面談の本体です。
まず、気づきを行動に落とします。壮大な目標ではなく、次の面談までに何を一つ試すか、という小さな一歩まで具体化します。大きな計画より、明日始められることのほうが、実際に動けます。
このとき、目標を上司が決めないことが大切です。こうしなさい、と渡された目標では、人は本気で走れません。いくつかの選択肢を一緒に並べ、最後は本人に選んでもらいます。自分で選んだからこそ、その一歩は自分ごとになります。
そして、フォローを約束します。次はいつ話すか、そのとき何を確認するかを決めておくと、面談が単発で終わりません。
あわせて、会社としてできる支援、たとえば任せられそうな仕事や、学びの機会があれば、押しつけない形でそっと添えます。
キャリア面談を成功に導くポイント
ここまでの流れを、実際に機能させるためのコツを、なぜそうするのかとあわせて挙げます。
心理的安全性を確保する
面談で本音が出るかどうかは、ほぼここで決まります。社員は、ここで話したことが評価や異動の判断に使われるのでは、と少しでも警戒すると、当たり障りのない優等生の答えしかしなくなるからです。
だから冒頭で、「ここで話したことで、評価が変わることはないよ」と言葉で伝えます。言いにくいことを話してくれたら、まず「話してくれてありがとう」と受け止めます。やりがちなNG:評価の空気がにじみ、社員が本音を引っ込める。
傾聴と質問を使い分ける
上司は、良かれと思って話しすぎてしまいます。けれど主役は社員なので、話す時間は社員のほうが長くなるのが自然です。
まず最後まで聴き、相手が話しきってから、「これからどうしたい?」と考えを広げる問いを足す。この順番が、社員の内省を促します。
やりがちなNG:質問を次々ぶつけて、社員を尋問のように追い込む。
解決策を先に出さない。持論を押し付けない
課題が見えると、つい答えを渡したくなります。ですが、渡された答えは自分ごとにならず、社員は次も指示を待つようになります。本人が自分で気づいた答えのほうが、行動につながるのです。
解決策が見えても、いったん飲み込み、「あなたはどうしたいと思う?」と本人に返します。
やりがちなNG:自分の成功体験を、これが正解、と語ってしまう。
感情に寄り添いつつ、本人に選ばせる
寄り添いと成果のバランスに悩む方が、いちばん知りたいところだと思います。答えは、順番にあります。寄り添うだけだと、気持ちは軽くなっても行動は変わりません。
逆に、正論で先に進めようとすると、社員は分かってもらえないと感じて離れます。
だから、まず「そう感じてたんだね」と気持ちを受け止め、落ち着いてから、「じゃあ、何ができそう?」と本人に選んでもらう。この順序が肝心です。
単発にせず、続ける
キャリアは、一度の面談で定まるものではありません。せっかく決めた一歩も、フォローがなければ流れてしまいます。
次にいつ、何を確認するかを約束して終えると、社員はその一歩を実際に踏み出しやすくなります。
やりがちなNG:一度きりで、決めたことがそのまま忘れられる。
抱えきれない相談は、人事や専門につなぐ
キャリアの話は、ときに、病気・介護・お金・心身の不調など、面談者の手に負えない領域に触れます。無理に抱え込むと、かえって相手を追い込みかねません。
仕事の範囲を超える悩みは、その場で解決しようとせず、人事や専門窓口につなぎましょう。
それでも難しいと感じたら
進め方を押さえても、社員がすぐに心を開くとは限りません。キャリア面談は一度で完結するものではないので、継続を前提に、焦らず続けることが大切です。
そして、面談の中では、仕事の範囲を超える相談が出てくることもあります。病気や介護、お金の問題、あるいは心身の不調がうかがえるとき。
こうした課題は、その場で解決しようとせず、人事や、社内外の専門的な相談窓口につなぎます。上司や面談者の役割は、あくまで仕事とキャリアを一緒に考えるところまでで、そこから先は専門家の領域です。
関わり方の技術は万能ではありません。ここで線を引けることも、相手を守る大切な姿勢です。
引き出す・聴く関わりをさらに磨きたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

関連記事:傾聴力の高め方とは?部下の本音を引き出す聴き方のコツと、聴けない癖の直し方

関連記事:コーチングのやり方とは?部下を動かす4つのスキルと進め方を会話例で解説
まとめ|キャリア面談は、社員が自分で決めるのを支える場
社内のキャリア面談は、評価する場でも、上司が方向を示す場でもありません。社員が自分で気づき、自分で決めるのを支える場です。
評価面談と切り分け、社員を主役にする
上司はまず、答えを出す人ではなく、引き出す人になる
テーマから一つ選び、事実から、仕事の中の価値観・持ち味を言葉にする
引き出して終わらせず、本人が納得する一歩まで導く
単発にせず、フォローで続ける
まずは次の面談で、何か助言したくなったら、その前に、あなたはどうしたい、と一度問いかけてみてください。それが、意欲を引き出し、行動まで導く面談への一歩になります。
よくある質問
キャリア面談と評価面談は、何が違うのですか。
評価面談は、過去の成果を評価し、処遇を決める場です。キャリア面談は、これからのキャリアを一緒に考える、社員が主役の場です。この2つを分けて伝えることが、本音を引き出す前提になります。
何を話せばいいですか。テーマが決まりません。
業務経験の振り返り、仕事の中のやりがいや価値観、これから挑戦したいこと、いまの課題、の4つを軸にすると迷いません。すべてを話そうとせず、その日は一つを選んで深く掘るのがおすすめです。
どのくらいの頻度で行えばいいですか。
半年から1年に一度が一つの目安です。あわせて、日常の1on1で短く補うと、面談が単発で終わらず、変化に気づきやすくなります。
面談で、異動や退職の希望が出たら、どうすればいいですか。
その場で否定したり、逆にすぐ約束したりせず、まずは、そう考えている、という事実を受け止めます。そのうえで、一人で判断せず、人事と連携して対応します。
部下がキャリアを考えたことがなく、話が進みません。
遠い将来をいきなり聞くと固まりがちです。最近やりがいを感じた場面など、直近の実感から小さく入ってみてください。
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