
伝えたつもりが、ただの指摘に聞こえてしまう。否定していると思われたくなくて、言うべきことを飲み込んでしまう。パワハラと受け取られないか不安で、当たり障りのないことしか言えない。部下やメンバーへのフィードバックに、こうした難しさを感じている方は多いはずです。
先にお伝えすると、フィードバックは、相手を否定することでも、上司が一方的に評価を下すことでもありません。相手の行動について事実を返し、本人が自分で次の一歩を見つけるのを助ける、対話です。角を立てず、でも甘やかさずに伝えるのは、特別な才能ではなく、順番とコツで身につきます。
この記事では、ポジティブとネガティブの使い分けから、事実に絞った伝え方、シーン別の例文、避けたいNG例までを解説します。そして、多くの解説が手薄なところ、つまり、伝えて終わりにせず、相手が自分で改善を決める対話にする方法を、会話例とともに見ていきます。
- フィードバックとは?ポジティブとネガティブの使い分け
- ポジティブフィードバックとネガティブフィードバック
- フィードバックの伝え方の基本
- 伝える前に、ひとことことわる
- 人格ではなく、事実と行動に絞る
- 良い点、改善点、期待、の順で伝える
- 変えてほしいことは、一つだけ
- タイミングは、早く・個別で
- シーン別|フィードバックの例文
- 良い仕事を認めるとき
- 改善を伝えるとき
- やり直しなど、言いにくいことを伝えるとき
- 避けたい|フィードバックのNG例
- 伝えて終わりにしない|フィードバックを対話にする
- 会話例|ダメ出しで終わる伝え方から、次につながる伝え方へ
- フィードバックを、次の行動につなげる
- まとめ|フィードバックは、伝えて終わりでなく、対話にする
- よくある質問
フィードバックとは?ポジティブとネガティブの使い分け
フィードバックとは、相手の行動や成果について、成長につながるように事実を返すことです。もともとは、養分を戻す、という意味の言葉で、相手の成長の糧を返すもの、とイメージすると分かりやすいです。
ポジティブフィードバックとネガティブフィードバック
フィードバックには、大きく2種類あります。ポジティブフィードバックは、良い行動や成果を認めて、その継続を促すものです。たとえば「あの対応、すごく丁寧だったね」と、良かった行動を具体的に伝えます。相手の自信とやる気を支えます。
ネガティブフィードバックは、改善してほしい点を伝えて、行動の修正を促すもの。「あの報告、結論が抜けていたよ」と、直してほしい点を事実で伝えます。
大切なのは、使い分けです。ネガティブばかりでは、相手は萎縮します。逆に、ほめるだけでも、成長は止まります。日常では、できていることを認めるポジティブを多めにして、信頼の土台をつくっておく。
そのうえで、改善を伝えるときも、まずできている点に触れてから伝えると、受け取ってもらいやすくなります。
フィードバックの伝え方の基本
伝え方には、押さえるべきコツがあります。難しい理屈ではなく、次の5つです。
伝える前に、ひとことことわる
いきなり指摘から入ると、相手は身構えます。その前に「いま気づいたことを、一つ伝えてもいい?」と、ひとこと許可をとります。
小さなことですが、これだけで、相手は心の準備ができます。あわせて「もっと良くなってほしいから伝えるんだ」という意図を先に示すと「責められるのではない」と感じてもらえて、そのあとの言葉が届きやすくなります。
人格ではなく、事実と行動に絞る
いちばん大切なのが、これです。「やる気が足りない、詰めが甘い」といった人格や性格を指すと、相手は否定されたと感じ守りに入ります。
そうではなく、起きたことを事実で伝えます。たとえば「やる気あるの?」ではなく「今日の資料、参考リンクが抜けていたよ」と伝えましょう。
このとき「あなたが悪い」と決めつけず「私には、少し急いで作ったように見えたんだけど」と、主語を自分にして、自分にはこう見えた、という形で返すと、角が立ちません。
どんな状況で、どの行動が、どういう影響につながったか。この3つを具体的に言えると、相手も、責められたのではなく、事実を教えてもらった、と受け取れます。
良い点、改善点、期待、の順で伝える
改善点だけを伝えると、どうしてもダメ出しに聞こえます。そこで、順番を工夫します。
まず、できている点を具体的に認める。次に、もっと良くなる一点を伝える。最後に、期待や、できている点をもう一度添えて締めます。
たとえば「要点の整理は、すごく分かりやすかったよ。そのうえで、結論をもう少し早く出せると、さらに伝わると思う。あなたの整理力なら、すぐできそうだね」というように伝えましょう。
良い言葉で挟むと、改善も前向きに受け取れます。承認するときは、いいね、で流さず、何がよかったのかを、その人らしさに紐づけて具体的に伝えるのがコツです。
変えてほしいことは、一つだけ
一度に、あれもこれもと指摘すると、どれも印象に残りません。今回いちばん効く一点に絞って伝えます。欲張らないほうが、フィードバックは効果を発揮するのです。
タイミングは、早く・個別で
フィードバックは、時間を空けず、その都度伝えるのが基本です。ため込んで後でまとめて言うと、相手は蒸し返されたと感じます。そして、改善を伝えるときは、大勢の前ではなく、個別の場を選びます。人前でのダメ出しは、恥をかかせるだけで、逆効果です。
シーン別|フィードバックの例文
実際の言い回しを、シーン別に挙げます。そのまま使うより、この形を参考に、あなたの言葉に置き換えてみてください。
良い仕事を認めるとき
ほめるときは、いいね、助かったよ、で終えず、どの行動が、どう良かったかまで伝えます。具体的だと、お世辞に聞こえず、本人も何を続ければいいか分かります。
「あの資料、要点が3つに整理されていて、すごく読みやすかったよ。おかげで会議が早く進んだ」
「締切が厳しい中で、早めに相談してくれたよね。抱え込まずに共有できるところは、あなたの強みだと思う」
改善を伝えるとき
人格ではなく事実に絞り、できれば改善の方向を一緒に考え、問いで締めます。
「この見積り、単価の欄が前回と違っていたよ。取引先に出す前に気づけると安心だね。どうすれば、出す前に確認できそう?」
「報告が口頭だけだと、後から追いにくいんだ。次から、一言でもメモで残してもらえると助かる」
やり直しなど、言いにくいことを伝えるとき
「正直に言うと、今回の提案は、前回より少し練りが浅いと感じた。理由は、比較の根拠が一つだけだったからなんだけど、ここは自分ではどう見てる?」
いずれも、事実と、それがどう影響するかをセットにし、最後を問いにして、相手の受け止めを聞いています。
避けたい|フィードバックのNG例
伝え方を誤ると、成長どころか、やる気と信頼を損ないます。次のやり方は避けましょう。
人格・性格を責める:「君はいつもそうだ」「やる気あるの?」は、相手を否定するメッセージです。行動と事実に絞ります。
ダメ出しだけで、改善案がない: 悪い点を指摘するだけでは、相手は止まってしまいます。次にどうすればいいか、まで一緒に。
あいまい・回りくどい:もう少し何とかして、では伝わりません。どの行動をどうしてほしいか、具体的に。
大勢の前で、ネガティブを伝える: 恥をかかせ、防衛反応を招きます。改善の話は、必ず個別の場で。
ため込んで、一気に伝える:小さいうちに、その都度。まとめて出されると、相手は責められたと感じます。
伝えて終わりにしない|フィードバックを対話にする
ここが、他の解説があまり触れないところで、いちばん差がつくところです。フィードバックは、上司が言って終わり、ではありません。伝えたあとを、対話にできるかどうかで、相手の受け取り方も、その後の行動も、大きく変わります。
まず、伝えたら、どう受け止めたかを聞きます。こちらが伝えたつもりのことと、相手に伝わったことは、しばしばずれています。「いま伝えたこと、どう感じた?」と一言聞くだけで、そのずれに気づけます。
次に、改善策を、上司が渡さないことです。こうしなさい、と正解を渡すと、その場は早いですが、相手は自分ごとになりません。「じゃあ、次はどうするのが良さそう?」と、本人に考えてもらう。自分で決めた改善のほうが、実際に動けます。
そして、相手の言葉は、言い換えずに受け止めます。反論や言い訳が返ってきても、まずは最後まで聞く。頭ごなしに遮らないだけで、相手は、分かってもらおうとしてくれている、と感じます。
一方的な評価から、一緒に次を考える関わりへ。これが、フィードバックを対話にする、ということです。
聴く力そのものは、以下の記事でくわしく扱っています。

関連記事:傾聴力の高め方とは?部下の本音を引き出す聴き方のコツと、聴けない癖の直し方
会話例|ダメ出しで終わる伝え方から、次につながる伝え方へ
部下が作ってきた提案資料に、誤字が多く、結論が伝わりにくい、という改善点があった場面で、比べてみます。
Before:ダメ出しで終わる
上司「この資料さ、誤字も多いし、結局何が言いたいのか分からないよ。もっとちゃんと作ってくれないと困るな。いつも詰めが甘いんだよね」
部下「……すみません。作り直します」
伝えている中身は間違っていませんが、いつも詰めが甘い、と人格に触れ、事実と改善が混ざって、ダメ出しで終わっています。部下は萎縮するだけで、なぜ、どう直せばいいのかは、心に残りません。
After:事実で伝え、本人に考えてもらう
上司「資料ありがとう。まず、要点を3つに絞ってくれたのは、すごく分かりやすかったよ。(間)一つ気になったのが、結論が最後のページまで出てこないところ。読む人が、で、何をすればいいの、と迷いそうだなと感じたんだけど、どう思う?」
部下「たしかに……自分では流れを重視したんですけど、言われてみると、結論が遅いかもしれません」
上司「なるほど、流れを大事にしたんだね。じゃあ、読む人に一番早く伝えるには、どうするのが良さそう?」
部下「結論を最初に持ってきて、そのあとに理由を説明する形にしてみます。あと、誤字は、提出前に一度読み返します」
上司「いいね。その二つで、ぐっと伝わる資料になると思う。直したら、また見せて」
伝えている指摘は、Beforeとほぼ同じです。違うのは、人格に触れず事実に絞ったこと、できている点を先に認めたこと、そして、こう直せ、と渡すのではなく、どう思う、どうする、と本人に考えてもらって締めたことです。
同じ指摘でも、順番と、最後を問いにするかどうかで、受け取り方も、その後の行動も変わります。
フィードバックを、次の行動につなげる
対話で改善の方向が見えたら、そこで終わりにせず、行動につなげます。
本人が決めた改善を、いつまでに何をするか、という小さな一歩にします。そして、次にそれを確認する約束をしておくと、言いっぱなしになりません。
さらに大切なのが、次にできていたら、そこをまたポジティブに返すことです。改善できたのに、何も言われないと、相手は、指摘だけされた、という記憶しか残りません。
できたね、と認めることで、フィードバックが、指摘の場から、成長を一緒に喜ぶ場に変わります。この好循環が回り始めると、相手はフィードバックを、前向きに受け取れるようになります。
まとめ|フィードバックは、伝えて終わりでなく、対話にする
フィードバックの伝え方で大切なのは、正しく指摘することよりも、相手が受け取って、自分で動けるようにすることです。
ポジティブとネガティブを使い分け、日常はポジティブを多めに
人格ではなく事実に絞り、できている点を認めてから、変えることは一つだけ
ネガティブは、早く、個別の場で
伝えたら受け止めを聞き、改善は本人に考えてもらう
次の行動まで導き、できたら、またそこを認める
フィードバックは、伝える技術であると同時に、相手の本音を引き出す技術でもあります。
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相手の状態に合わせた関わりの使い分けや、過去・現在・未来の視点で相手の考えを引き出すコツなど、明日のフィードバックや面談から、そのまま使える内容です。
次にフィードバックを伝えるときは、言い切って終わりにせず、最後に、どう思う、と一言足してみてください。それだけで、伝える行為が、対話に変わります。
よくある質問
ネガティブフィードバックが苦手で、つい言えません。
言いにくいのは、相手を思うからこそです。人格ではなく事実に絞り、改善の方向をセットにして、個別の場で伝えれば、否定にはなりません。良くなってほしい、という願いが根にあれば、それは相手にも伝わります。
ほめるのが苦手で、わざとらしくなってしまいます。
お世辞になるのは、あいまいにほめるからです。事実に基づけば、わざとらしくなりません。すごいね、ではなく、どの行動が、どう良かったかを具体的に伝えてみてください。
何度言っても、同じことを繰り返します。
伝え方を、一方的な指摘から、本人に考えてもらう対話に変えてみてください。あわせて、個人の意識だけに頼らず、仕組みで防げないかも一緒に考えると、変わりやすくなります。
年上やベテランへのフィードバックは、どうすれば。
敬意を前提に、事実と、相談ベースで伝えます。こう直して、ではなく、こう見えたのですが、どうでしょう、と、意見を求める形にすると受け取ってもらいやすくなります。
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